病院というとどうしても霊が見えるとか、
すすり泣く声が聞こえるなどといった噂が付きまといます。

それに病院スタッフなら霊体験をするのが当たり前などとも聞きます。
しばらく入院と言われたときには、
そのようなことばかりが頭をよぎって怖くてたまりませんでした。

しかも私は3人部屋にたった一人で入院することになったのです。
家族は「広くていいじゃない」とか「一人のほうが気楽でいいよ」などといいますが、
広い部屋に一人で寝泊りするのかと思うと、怖くて気が気ではありませんでした。
そこで一晩は家族に泊まってもらうことにし、その夜は何とか安心して眠れました。
そして二晩目からは一人で寝ることになったのですが、
やはり一人で寝るのは怖くてたまらず、なかなか寝付けませんでした。

一人だけの最初の夜は寝付けず、
「早く朝にならないかな」と時計ばかり見ていました。
大体霊が出るのは夜中の2時ごろだそうなので、
2時になるのが怖くてたまりませんでした。
何か怖いものが見えそうで、どきどきしていました。

しかし12時を過ぎると少し眠気を感じて、いつの間にか眠っていました。
しばらく眠っていたのですが、
廊下を「パタパタ」とスリッパで歩く音が聞こえてきて目が覚めました。
「何時だろう」と思い時計を見ると、もうすぐ2時です。

こんな夜中に入院患者さんが歩いているわけはありません。
看護師さんならスリッパではなくナースシューズで歩くので足音が違います。
私は「とうとう霊が来た」と思って、心臓がどきどきしてきました。

布団にくるまってどきどきしていると、
私の部屋に向かって足音が近づいてくるではありませんか。
私はもう怖くてたまりません。「まさか部屋の中には入って来ないよな」と思っていたときです、

ドアを開ける音がしました。

そのドアはドアノブを回して開けるタイプだったので、
ドアノブを回す音が聞こえたときには、私の恐怖はマックスに達していました。
そしてついにドアが開き、また「パタパタ」とスリッパの音がしました。

今度は私の部屋の中で音がします。